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中国の製品品質法に基づく販売者の責任について(いわゆるPL法)
ある企業様(A社)が、中国企業とのOEM契約を締結するとのことでしたので、英文契約書の作成とともに、物流や、法制度の調査等のサポートを継続的に行わせて頂いたときのことです。
そのA社は、ある製品の製造・販売を行う会社で、海外企業からのOEM又はPB(プライベートブランド)による製造を請け負い、海外進出をなさろうとしておりました。
先々では、販売店契約によって、各国に販売店を置き、まさにグローバルに活動する企業へと羽ばたくその最初の一歩となる取引でした。
最初にこの話をお伺いした時に、まず、中国でのPL法との関係が問題になるな、と考えましたが、よくよくお話を伺うと、今回は、製造自体は、国内の関連他社に任せるので、A社自体は、中国企業への販売者となるとのことでした。
日本では、PL法の対象は製造者に限られますので、通常の発想では今回の取引での販売者という立場からは、PL法の適用があるとは考えにくいと思います。
ですが、国内法だけの認識だけで国際取引を行うことは、非常に危険な行為といえるでしょう。
まさに、今回の件が良い例で、中国では、PL法の対象は「販売者」にも及びます。
この事実を知っていれば、事前に、PL保険に加入するか、それとも、しないのかを検討し、事後の訴訟リスクに着実に対応することが可能となります。
このことからも、海外との契約締結の前提として、対象国の法制度等を調べておくことは、重要事項だといえます。
以下に、FS(フィーザビリースタディ)としまして、本件について調査した報告書の一部を要約したものを掲載しておきますので、ご参考ください。
当事務所のFS(フィーザビリースタディ)要約版
■概観
中国の製品品質法(以下、PL法)では、販売者も表示した品質と異なる商品を販売した場合と、何らかの過失によって人の身体、財産を侵害した場合には、損害賠償責任を負うことがあります。
ですが、大きくまとめると、商品の検査をし、しっかりした標識をし、その標識通りの品質があるならば、責任は負わないものと考えられます。
以下、販売者の責任と損害賠償責任を簡単にまとめておきます。
◆販売者の責任
PL法では、その第2節の21条から27条で、販売者の責任と義務を定めています。
要約しますと、以下の項目となります。
①仕入れ時における検査義務(21条前段)
②中国での製品合格証明と一定の包装標識があること(21条後段、15条(標識の内容を規定しています))
③品質保持義務(22条)
④虚偽表示の禁止(25条、26条、27条)
⑤効力、又は、変質した商品の販売禁止(23条)
◆販売者の負う損害賠償責任の規定
そして、28条と30条で、損害賠償責任を規定しています。
要約しますと、以下のようになります。
①販売する製品の品質に以下のようなことがある場合(無過失責任 28条)
1製品が当然備えなければならない使用性能を備えていず、事前に説明がなされていないとき。
2製品又はその包装上に採用することを明記した製品標準に適合していないとき。
3製品説明、実物見本などの方式で表示した品質の状態に適合していないとき。
②販売者の過失によって製品に欠陥を存在させた場合で、人身、他人の財産に損害をもたらしたときは、販売者は賠償責任を負わなければなりません。(過失責任 30条)
◆参考資料(PL法 抜粋)
第15条 (製品又はその包装の標識)
製品又はその包装の標識は、次に掲げる条件を満たしていなければならない。
1 製品品質検査合格証明があること。
2 中国語で明記した製品の名称、生産工場の名称及び所在地があること。
3 製品の特徴及び使用条件に基づいて、製品の規格、等級、包含している主要成分の名称及び含有量など明記が必要な事項を、適切に明記していること。
4 使用期限のある製品については、生産日及び安全使用期間又は効力を喪失する日を明記していること。
5 正しく使用しないと、製品自体が容易に破損し又は人身、財産の安全に害をもたらす恐れがある製品は、警告表示標識又は中国語の警告表示説明があること。
包装していない食品及びその他製品の特徴に基づき標識を付すことが難しい包装していない製品は、製品標識を付さないことができる。
第2節 販売者の製品品質責任及び義務
第21条 (仕入時における検査義務)
販売者は仕入時の検収制度を実行し、製品合格証明及びその他の標識を確認しなければならない。
第22条 (品質保持義務)
販売者は措置をとって販売する製品の品質を保持しなければならない。
第23条 (効力を喪失し又は変質した製品の販売禁止)
販売者は効力を喪失し又は変質した製品を販売してはならない。
第24条 (製品の標識の基準)
販売者が販売する製品の標識は、この法律の第15条の定めを満たしていなければならない。
第25条 (原産地、工場の名称、所在地の虚偽表示の禁止)
販売者は原産地表示を偽ってはならず、他人の工場の名称、所在地を偽造又は盗用してはならない。
第26条 (虚偽の品質表示の禁止)
販売者は認定標識、著名品優良品標識などの品質標識を偽造又は盗用してはならない。
第27条 (規格維持義務、不正表示の禁止)
販売者は販売する製品に雑物、偽物を混入させ、偽物を本物と偽り、粗悪品を上等品と偽り、不合格品を合格品と偽ってはならない。
第4章 損害賠償
第28条 (販売者の責任)
販売する製品が次に掲げる情況のいずれかにあるときは、販売者は修理、交換、返品の責任を負わなければならない。製品を購入した使用者、消費者に損害をもたらしたときは、販売者は損害賠償しなければならない。
1 製品が当然備えなければならない使用性能を備えていず、事前に説明がなされていないとき。
2 製品又はその包装上に採用することを明記した製品標準に適合していないとき。
3 製品説明、実物見本などの方式で表示した品質の状態に適合していないとき。
販売者が前項の定めにより修理、交換、返品、又は損害賠償をした後、生産者の責任又は販売者に対し製品を供給したその他の販売者(以下、製品供給者という)の責任に帰すときは、販売者は生産者又は製品供給者に求償する権利をもつ。
販売者が第1項の定めに従い修理、交換、返品、損害賠償をしなかったときは、製品品質監督管理部門又は工商行政管理部門が是正を命じる。
生産者間、販売者間及び生産者と販売者間で締結した製品の売買又は加工請負契約に異なる約定があるときは、契約当事者は約定に従い履行する。
第30条 (販売者の製品の欠陥に対する責任)
販売者の過失が製品に欠陥を存在させたことにより、人身、他人の財産に損害をもたらしたときは、販売者は賠償責任を負わなければならない。
販売者が欠陥製品の生産者を明白に指摘できず、欠陥製品の製品供給者をも明白に指摘できないときは、販売者は賠償責任を負わなければならない。


















